名詞修飾節を導入したあと、会話の中で使わせようとすると、なかなかうまくいかないことがあります。
これは、わたしが作ったケーキです。
英語の関係代名詞の練習なら、This is the cake that I made. と、そのまま形にすればいい。日本語でも同じように[わたしが作った]ケーキ、と修飾部分を前に置けば文はできます。
でも、少し考えてみてください。日本語で実際にこの状況になったとき、わたしたちはこう言うでしょうか。
たぶん、言いません。
このケーキ、わたしが作りました。
こちらのほうが楽ですし、自然です。つまり「これはわたしが作ったケーキです」という文は、文法的には正しいけれど、練習の中でしか出てこない日本語になりやすい。教科書の例文としては優秀でも、教室を出た瞬間に使われなくなる文型です。
わたしはこれが長く気になっていました。せっかく導入しても、練習が終われば学生の中から消えていく。
写真だと、なぜか自然に言える
ところが、写真を使うと状況が変わります。
授業で、まずわたしから1枚見せます。
これは去年バリ島で撮った写真です。
これは、不自然でしょうか。まったく不自然ではありません。むしろ「この写真、去年バリ島で撮りました」と言うより、こちらのほうがしっくりくる場面すらあります。
次に、学生にも同じように写真を見せてもらいます。すると、こんな文が出てきます。
これは主人が済州島で撮った写真です。
これは済州島で買ったおみやげです。
ケーキのときとは違って、無理がありません。
正直に書くと、授業でこの方法を使っていたとき、わたしはここまで考えていませんでした。写真を使うとうまくいく、という経験が先にあって、理由を考えたのはあとからです。
そのうえで、いま説明するとすればこうなります。
写真やおみやげを見せながら紹介する場面では、「目の前のこれが何なのか」を伝えることが、会話の目的そのものになっています。だから「これは〜です」という形と、言いたいことがぴったり重なる。
ケーキのほうが不自然だったのは、伝えたい中心が「誰が作ったか」なのに、文の形は「これは何か」を説明する形だったからではないでしょうか。言いたいことと文の形がずれていた。だから、わざわざその形で言う理由がなかった。
もっとうまい説明ができる方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。わたしも知りたいところです。
いずれにせよ、写真を見せ合う場面では学生が自分から使います。練習させられている感覚がありません。
実際の手順
教師が写真を1枚見せて、「これは去年バリ島で撮った写真です」と言う
学生にも、自分のスマホの中から1枚選んで見せてもらう
出てきた文を受けて、もう少し話を続ける。写真の話は自然に広がります
写真以外のモノにも広げる。「これは済州島で買ったおみやげです」
応用として
これは去年バリ島に行ったときに撮った写真です。
修飾部分が長くなり、「〜とき」が入った形です。『みんなの日本語』なら、L22(名詞修飾)からL23(〜とき)への流れがそのまま使えます。写真という同じ素材のまま課をまたげるので、学生にとっては「新しい文型」ではなく「この前の言い方をもう少し詳しくしたもの」として入っていきます。
おわりに
文型を教えるとき、「その文が実際に使われる場面はどこか」を先に探しておくと、練習が練習で終わらなくなります。名詞修飾節にとって、それが写真でした。
みなさんの教室では、どんな場面を使っていますか。よければコメントで教えてください。
次回は、Xに毎日添えているイラストを、AIでどう作っているかを書く予定です。写真を渡して「顔だけイラストにしてほしい」と頼んだつもりが、首に掛けていたタオルまで一緒に引き継がれて、そこから何ヶ月も尾を引いた話です。実際のプロンプトも載せます。
Xでは毎日、こうした短いメモを書いています。→ https://x.com/Satoken727

